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キーワード:耳鼻科,耳管通気処置,心肺停止,胸骨圧迫,人工呼吸
【事案の概要】
耳鼻科で耳管通気処置を受けて心肺停止になりその後死亡した少女の父が、医療機関に対し、①人工呼吸を行わなかった過失、②バッグバルブマスク換気を行わなかった過失、③CPR(心肺蘇生)を中断した過失、④有効な胸骨圧迫を行わなかった過失、⑤静脈路の確保と薬剤投与を行わなかった過失があった、と主張した。過失と死亡との間の因果関係についても争われた。
【判決の骨子】
・反復する滲出性中耳炎に対する一般的治療である耳管通気処置の際に、加圧された空気が先天的に存在していた右中耳の硬膜露出部から大脳周囲に進入し気脳症となり、気脳症がジリス神経反射として心停止を引き起こし、脳血流障害から意識消失と呼吸停止につながったものと推察される。救急隊到着までの心肺機能の補助が結果的に不十分なものにとどまり、中枢神経系が限界を超える長時間の低酸素状体にさらされてしまった可能性が高い(モデル事業の報告書から)。
・当該医療機関において、バッグバルブマスク換気を行いうる人的物的体制を整え、患者に対してこれを実施するべき義務を怠った過失がある。
・(脈拍の触知と自発呼吸の回復があった以降、看護師が患者に対する心臓マッサージ(胸骨圧迫)を中止しているが)、中止すべきではないにもかかわらずこれを中止した過失がある。
・自律神経反射としての心肺停止は、発生しても通常は一過性で速やかに回復することから、回復するまでの短時間、適切な蘇生処置によって心肺機能が維持されていれば、脳死に至るような経過を回避でき、救命の可能性は高まったとされていることからすれば、本件過失と患者の死亡との間に因果関係を認めることができる。
【備考】 請求総額6847万円余のうち、6156万円余の支払義務を認めた。
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