医療事故・医療過誤・医療ミスについて弁護士に相談したい患者さん・ご家族さまへ。主に近畿圏(兵庫・大阪)で活動しています。

医療事故・医療過誤(患者側)事件に集中して取り組んでいます

弁護士 小野郁美

くすのき法律事務所(兵庫県弁護士会所属)

〒650-0015 神戸市中央区多聞通3丁目2番9号 甲南スカイビル710号室

もしかして医療事故かも…?
一度、弁護士に相談して
みませんか。

 

調査がいちばん大切!!

医療事故・医療過誤の解決に向けて、いちばん大切なところはここです

医療事故・医療過誤の「弁護士による調査」

どうして調査が大事なの?(すぐ交渉とか、損害賠償請求できないの?)

医療事故・医療過誤事件に取り組むときは、調査がいちばん大切です!!
調査は、ざっくり言うと、次のことをしています。

  • まず事実の確認のため、カルテ等を入手して、時系列をまとめる
  • 「何でこうなったのか」という「機序」を考える
  • 「注意義務違反/過失」「損害」「因果関係」を、医学的側面/法的側面から検討する

以下、大変に長いです(すみません)。見出しだけ飛ばし読みでもかまいませんが、弁護士への依頼をお考えの場合は、すみずみまで目を通していただけると参考になると思います。

相手方への責任追及(損害賠償請求)をするためには、法律上3つの要件がいります

診療に関連して障害や死亡の結果が生じた、としても、それだけでは相手方医療機関に対して責任の追及(損害賠償請求)はできません。
(結果が良くなかった、というだけでは、医療機関の責任は問えません。)

 結果に対する責任を問うためには、法律上、3つの要件が必要です。(これを、患者側が立証できないといけません。)

  1. 注意義務違反/過失
  2. 損害
  3. 因果関係

また、この3つの要件の前提として「何がどうしてこうなったのか」(医学的機序)が明らかになってないといけません。

まず、事実をつかむことが大切

患者とご家族は「何があったのかさっぱり分からない」のが普通

お金の貸し借りなどなら、借用証などの書面が残っていたり、入出金の記録があったりするので、ひととおりの事実はつかみやすいです。

一般的な民事事件の場合だと、何があったのか分からない、ということは少ないでしょう。

 お金の貸し借りなら、いつ、誰と、どのように約束をしてお金の受け渡しをしたのか、ということをご相談者の方から聞き取ることができますし、借用証など証拠になる書類もお持ちのことが多いでしょう。

 弁護士も、伺った事実や持参された証拠資料から、法的な主張を考えることができます。

 しかし、医療事件の場合、ご本人であっても、自分に何が起こったのか全く分からないことがあります。しかも、手元に資料もほとんどないのです。

 

「注射を受けたら、急に具合が悪くなってしまった」

  →薬剤の名前は?量はどれくらいでしたか?

30分で終わる簡単な手術、という説明だったが、術中に死亡した」

→手術中に何があったのですか?

「赤ちゃんが生まれたが、仮死状態で重篤な後遺症が残った」

→赤ちゃんに何があったのですか?

患者さんやご遺族の方は、何も分からない場合が多いのです。

 医療事件の場合は、まず「何があったのか」ということを調査しなくてはなりません。この調査には、診療録などの記録を入手することが必要不可欠です。(だから、医療過誤事件の場合は、お話を聞いただけで「うんそれは医療過誤だね!」と断定したり、相手方に申し入れ書を書いたり、訴訟を起こしたりすることはできないのです。)

事実を確かめるにはまずは診療記録の入手から!!(といっても簡単ではないこともある)

診療記録とともに、検査データや画像も入手します。

(「そもそも診療録の記載を信じていいのか」という疑問が生じる場合もあるのですが、とりあえずその問題はおくとして)患者さんにどのような医療行為が行われたのかを明らかにするための第一の手掛かりは診療記録です。

 現在は、各医療機関に個人情報保護法の適用があるので、医療機関もこれによって診療記録の開示をするのが原則です。(開示しないことができるのは、個人情報保護法28条2項1~3号の例外にあたる場合だけです。)

開示請求に応じない医療機関も…

しかしながら、残念ながら、今でもカルテ開示を拒否する医療機関がありますし、私はその経験があります(「カルテ開示と証拠保全」をご覧ください。)。

 また、開示されたのが「記録の一部だけ」ということもありました(上記リンク先)。

 

電子カルテでも改ざんされたケースもあるので、必要な時は裁判所の「証拠保全」手続きで

電子カルテの改ざんが裁判で認定された例も

遺族がカルテ開示を申請した後に、カルテの記載が追記(改ざん)されたと認定された事例もあり(第一審:大阪地方裁判所平成24320日判決、控訴審:大阪高裁平成25年1月30日判決)、診療録の入手を慎重に進める場合もあります。

必要な時は、裁判所による「証拠保全」の方法で診療録を取得

カルテ開示請求が拒否されたり、改ざんの恐れがある時には、裁判所による「証拠保全」の方法で診療録を取得します。(これは裁判手続きです。)

 裁判所に申し立てをし、裁判所が証拠保全決定を出すと、裁判所(裁判官)が医療機関に直接出向き(相手方医療機関は、当日の1時間くらい前に初めて証拠保全決定が出たことの知らせを受ける)、その場でコピーするなどして診療記録等を保全するのです。

 この証拠保全により、できる限り改ざんを防止し、また、診療記録全体を保全することができます。

※証拠保全については「カルテ開示と証拠保全」にも詳しく書いていますので、またそちらもご覧ください。

…と、ここまで来て、ようやく診療録等を手に入れて、具体的な事実として何がなされたのかを検討することができます…

診療経過一覧表の作成 → やっと事実の把握完了!

入手できた診療録等を元に、簡単なケースでない限りは、診療経過を一覧表にまとめたものを作ります。これを作成することで、患者さんの治療経過をよりよく把握することができます。(私は、ご依頼者様にもこれを送っています。ただ、これを作るのに数か月かかることもあります……)

 後で協力医と面談する際にも、これが役に立ちます。

相手方医療機関等に、損害賠償請求ができるかを検討する(①「注意義務違反/過失」②「損害」③「因果関係」を考える ここからが法的な検討)

まず①「注意義務違反/過失」って何?

医療過誤事件における「過失」は、こんな風に表すことができるでしょう(ものすごいざっくりです)。

担当医が、いつ、何をすべきか(またはすべきでなかったか)

 この過失は、ふんわりしたものではダメです。
「○○の時点」で「○○をすべきだった」「××をすべきでなかった」という、明確なものであることが必要です。

どうやって注意義務(過失)を明確にするの?

「過失があるかどうか」をどうやって検討するの?

まず、患者さんの症状や検査データなど、注意義務発生の根拠となる事実を拾います

先に「診療経過一覧表」を作る、と書きましたが、これができていると、その時その時の患者さんの状況を把握できます。注意義務(過失)を考えるには、これが元になります。

例えば、〇年〇月〇日の午前中、とある医療機関に「朝から、背中がすごく痛いんですという訴えの患者さん(壮年男性)が訪れた。診察した医師は痛み止め(飲み薬)を処方をした。患者さんは痛み止めを飲み午後から会社に出勤していた。患者さんは夜、会社のトイレで倒れた状態で発見され、搬送先で死亡が確認された(解剖の結果、死因は心筋梗塞)。
というケースがあったとしましょう。(事案は架空のものです)

最初は「教科書」的なもの、その後、医学文献を集めて読みます。

教科書や医学文献から…

 上記の例なら「強い背部痛を訴えて受診した患者さんに対してなすべきこと(問診、検査等)は何か」ということを考えます。

 まずは基本的な教科書や、若手医師向けのテキストなどから考えていきます。

上に出した例ですと、具体的には、

①バイタルサインの確認はしていたか?
②問診の取り方は適切だったか?~既往症の確認、「痛みはいつから始まりましたか」「痛いのはどこですか(部位)」「どのような痛みですか」「痛みに強弱などはありますか」等々
③上記のような問診と同時に、心電図等の検査に進むかどうか

を考えていき、①問診に不十分はなかったか、②心電図検査をすべきでなかったか、などの点が浮かび上がってくることになるでしょう。

②「損害」

二つ目に考えるのは「損害」です。本件医療事故により、どのような損害が生じたか、ということです。先の心筋梗塞のケースは、損害の把握がしやすいですが(損害=死亡)ですが、難しいケースもあります。

損害の評価は、原則として「交通事故の基準で」

 人の死傷に関して、その損害をどのように評価するかについては(医療事故よりも断然数の多い)交通事故のこれまでの裁判の集積がなされています。

その内容は「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」「赤本」)として毎年出版されています。(また、ここでは詳しく触れませんが、他にも「緑本」「白本」「青本」などがあります。)

 医療事故でも、交通事故と同様に考えていきます。

医療過誤事件独特の問題

 しかし、医療事故・医療過誤により発生した損害は、交通事故によって発生するような損害と異なり、その評価が難しい場合があります。(交通事故による損害は基本的に「身体的に外力が加わる」ことによって発生してくるのに対し、医療事故・医療過誤の場合は、もともとに疾病があることからスタートし、複雑な経過をたどるからですね。)

損害の評価が難しい例

・赤ちゃんに生じた高度の後遺障害をどう評価するか(交通事故で同様の障害が起こる状況が考えづらい)

・がんの見落としによる病状の悪化(例えば、見落とした段階のステージが「Ⅱ」くらいと考えられ、現在「Ⅳ」程度に進行している、という時に、見落としによる損害をどう評価するか。)…

③「因果関係」

「医療過誤事件の難しさ」というと、一般の方は「過失」のことを想起されると思います。しかし、実務についている者として、医療過誤事件の難しさの多くは「因果関係の立証」にあると思います。

「原因」と「結果」をつなぐ「因果関係」が大切です。

「因果関係」って何?

因果関係というのは「あれなければこれなし」と説明されます。つまり、医療事故・医療過誤で言えばそのこと(これが「具体的な治療」という作為のこともあるし「あるべきことをしなかった」という不作為のこともあります)がなければ、こんな結果にはならなかったという関係のことです。

 ひっくり返して言えば「そのことがあっても結果は変わらないよね」ということになれば「因果関係はない」(=損害賠償請求はできない)のです。

「因果関係」は、患者側が立証しなくてはならない!

 この、因果関係は患者側が立証(証拠で証明)しなければならないのが、現在の裁判のルールです。そして、この証明の程度は「一点の疑義も許されない自然科学的証明」ではないものの「特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認する高度の蓋然性を証明すること」とされています(最判昭和50年10月24日)。そしてあまり言えませんが、事件にあたっていると、この「高度の蓋然性」のレベルは相当高いと感じます。(そこはこれから、患者側代理人の活動で変えていかなくてはいけないと考えていますが。)

先ほど挙げた例(背中が痛いとして受診した例)で言えば、「受診時に適切な問診を受け、必要な検査を受けていたら、心筋梗塞の発症をより早く発見して治療につながることができ、死亡を回避することができた高度の蓋然性があった」ということを患者側が立証しなくてはならない、ということになります。

特に立証が難しいのが「不作為の因果関係」

因果関係の立証は難しいのですが、とりわけ「不作為の因果関係」を立証するのが大変です。

 医療事故・医療過誤に相当する行為が、例えば「何かを(間違った薬剤を)注射した」というような「やってしまったパターン」(作為)だと、作為と損害との間の因果関係はまだ分かりやすいです(「間違った薬剤を注射したせいでこうなった。注射の間違いがなければ、結果は発生していない。」というのは分かりやすい。)

しかしこれが「しなかった」(不作為)タイプの医療事故・医療過誤だと、因果関係の立証は難しくなります。

 具体的な例を見てみましょう。

N年、N+1年、N+2年、と定期的に健康診断で肺レントゲンを撮影してもらっていたが、N+4年の今年、別のクリニックで肺レントゲンを撮影してもらったところ、肺がんであることを指摘され、精査の結果、既にステージⅣ相当であった。(事案は架空のものです)

このような事案であると、まず過失として「どの時点で発見が可能だったか?(過失の内容と、その時的ポイント)」ということも問題になるのですが、「発見した時点で、どのような治療をしたら、いったいどれくらい良くなり、現状とどれだけ違ったか」ということを、患者側が立証しなくてはなりません。

 このような場合は、当該患者さんはすでに悪化しているわけですから、その過程をやり直すことはできません。その制約がある中で、担当医が「適時に精査の指示を出していたら」という仮定をし「もし見つかっていたら具体的にどのような治療を行うべきだったか」、また、同様の病期の患者さんが同じような時期にどのような治療を受けたら、成果がどれくらいあるか、などを、医学文献を頼りに精査して、因果関係を検討(裁判を見据えて検証)することになるのです。

調査には協力医のお力を借り、また、過去の裁判例等の検討も致します

医療事故・医療過誤の検討について、第三者の立場でご意見を下さる協力医の存在は大変に大事です。

協力医への意見聴取

 相手方医療機関の責任(つまり、過失や因果関係)を考えていくにあたっては、まずは自分で基本的な教科書から医学文献をあたって考えていきますが、私はあくまでも医学については素人です。
 そこで、ひととおり検討した後、実際に臨床に携わる、第三者の医師の意見を伺って、さらに検討することが多いです。実際に、臨床に携わっている方のご意見は大切です。(第三者の立場から患者側に協力してくださる医師のことを協力医とよんでいます。協力医については「協力医について」をご覧ください。)

過去に同種の裁判例がないかは必ず確かめています。

裁判例などの調査

事案によっては、過去に同種の裁判例がないか、そこでどのように取り扱われているか、ということも調べます。

 また、これまでの人的なつながりから「公開されている裁判例」以外の、和解事例などを入手して検討することもあります。(和解事例は公刊物には記載されません。)

(ただ、時期的に、当時の議論が現在の問題にあてはまるかどうかは大変慎重に考えなくてはなりません。)

調査のまとめ

調査で何をしているか

 ここまで、長い文章を読んでくださいましてありがとうございました。このように、調査は、

①資料の収集②診療経過の把握→医学的知見の収集(文献/協力医)をしながら…→③法的責任の有無についての判断(注意義務/過失・損害・因果関係)

と、大変時間と手間をかけて行っています。

調査にかかる時間

…と、調査は以上のような過程を経るため、診療録等を入手してから、1年くらいの時間がかかります。

大変長くお待たせすることになり恐縮ですが、調査は容易な作業ではなく、この調査を十分に尽くせるかどうかが、その後の法的解決の行方を決めることになりますので、どうかご理解をいただきますよう、お願い申し上げます。

調査が終わった時

法的な責任追及ができると考えられる場合

法的な責任追及が可能と考えられる場合には、次のアクションとして、相手方に対してこちらの考えを伝え、賠償について話し合いをする「交渉」に入っていきます。

 この「交渉」は「調査」の次の段階になりますので、新しく委任契約を締結して行います。

法的な責任追及が難しいと考えられる場合

調査の結果、相手方医療機関への責任追及が難しい、ということになりましても、そこまでの調査の過程を詳しくご説明いたします。

調査を尽くしても、相手方医療機関に過失を認めるのが困難であったり、因果関係が認められないと考えられる場合もあります。その場合は、調査段階で終了となります。

 終了になる場合でも、どうして過失を認めるのが困難であるのか、因果関係を認めることが困難であるのか、という点について、調査結果を元に詳しくご説明致します。

初回ご相談は、リモート(ZOOM)の方式でも承ります。

一度相談してみようかな? と思われましたら…

 お一人やご家族だけで悩んでいると、ぐるぐると同じところを堂々巡りになってしまうことが多いと思います。勇気を出して、相談してみませんか。

実際に相談された方の感想 も参考になさってください。

受け付けは、24時間承っております。(土日祝日や休暇期間を除いて3営業日以内にご返信をしております。)

アクセス

住所

〒650-0015
神戸市中央区多聞通3丁目2番9号甲南スカイビル710

JR神戸駅、高速神戸駅(阪急・阪神・山陽)から徒歩2分

受付時間

相談申し込みフォームからの受付は24時間承っております。